慨歎がいたん)” の例文
おれなどはまだ学問が足りないのだ、平家物語を註釈する程に学問が出来て居ないのだと言つて、慨歎がいたんして筆をくところが書いてありました。
一人の無名作家 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
……いや、はや、実にどうも、慨歎がいたんに堪えんことです。するとゴイゴロフは、ひどく頼母たのもしそうな顔をして、おお、そうか。見そこなってすまなかったなァ。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その子は今桑摘みに行っていないがとにかく是非ぜひ休んで行けといって、しきりに一行の者を引止めて茶をすすめながら、木曾街道の駅々の頽廃たいはいして行く姿をば慨歎がいたんして
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
「いよいよもって、甘過うますぎる話じゃ」藤戸大尉は慨歎がいたんした。「俺の考えを最後に附加えるとこうじゃ。空軍として一時に参加出来るのは六百機、すなわち我れと同数に過ぎぬ。 ...
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そらまた、あのとおりの悪たればばあだから始末にいけない」と心の中で慨歎がいたんしながら、後戻りをして、も一度戸を叩いて、近所へ恥かしい思いをさしてやろうかと思ったが
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
悪霊の存在——善を捨てて、悪に走るほど慨歎がいたんすべきものはない。なんじは優勢なる魔群の存在を不思議に思うらしいが、事実はその通りであり、かもそはごうも怪むに足らぬ。
主は家隷けらいを疑い、郎党は主を信ぜぬ今の世に対しての憤懣ふんまんと悲痛との慨歎がいたんである。此家このやの主人はかく云われて、全然意表外のことを聞かされ、へどもどするより外は無かった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その傾向の慨歎がいたんすべきものであるか否かを、判定するまでは我々の任務でない。我々はただ現在の日常生活が、こうした急激の変遷の結果であることを知ればすなわち足るのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
とわれわれが想像して慨歎がいたんするのも、あながち誤りではなさそうである。
フランス料理について (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
と甲が慨歎がいたんすると、乙は
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「いやだなア、お父さんは」少年は体をくの字に曲げて慨歎がいたんしたのだった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)