“感想(かんじ)” の例文
今は梵音(ぼんおん)の難有味(ありがたさ)も消えて、唯同じ人間世界の情慾の声、といふ感想(かんじ)しか耳の底に残らない。丑松は彼の敬之進の物語を思ひ浮べた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
切迫塞つた苦しい、意識を刺戟する感想(かんじ)でなくて、余裕のある、叙情的(リリカル)な調子(トーン)のある……畢竟(つまり)周囲(あたり)の空気がロマンチツクだから、矢張夢の様な感想ですね。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
自然に世を隔てたやうな感想(かんじ)のするものもあらうけれど——其精神(こゝろ)の内部(なか)の革命が丑松には猛烈に起つて来て、しかも其を殊に深く感ずるのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『その感想(かんじ)——孤獨の感想(かんじ)がですね。』と、吉野は平生の興奮した調子で語り續けてゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
炉は直ぐ上(あが)り端(はな)にあつて、焚火の煙のにほひも楽しい感想(かんじ)を与へるのであつた。年々の暦と一緒に、壁に貼付(はりつ)けた錦絵の古く変色したのも目につく。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
『その感想(かんじ)——孤独の感想(かんじ)がですね。』と、吉野は平生(いつも)の興奮した語調(てうし)で語り続けてゐた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
豪爽(ごうそう)な感想(かんじ)のする夏の雨が急に滝のように落ちて来た。屋根の上にも、庭の草木の上にも烈しく降りそそいだ。冷(すず)しい雨の音を聞きながら、今昔(こんせき)のことを考える。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
信吾と静子は、顔にも言葉にも現されぬ或る異つた感想(かんじ)を抱かせられた。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
朝に晩に逢う人は、あたかも住慣れた町を眺(なが)めるように、近過ぎて反(かえ)って何の新しい感想(かんじ)も起らないが、稀(たま)に面(かお)を合せた友達を見ると、実に、驚くほど変っている。
並木 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)