恐気おそれげ)” の例文
旧字:恐氣
恐気おそれげも無く、一分時の前は炎のごとく真紅まっかに狂ったのが、早や紫色に変って、床に氷ついて、ひるがえった腹の青い守宮やもりつまんで、ぶらりと提げて、鼻紙を取って、薬瓶と一所に
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うぬ、業畜生、」と激昂げっこうの余り三度目の声は皺嗄しわがれて、滅多打に振被ふりかぶった、小手の下へ、恐気おそれげもなく玉のかんばせ、夜風に乱るる洗髪の島田をと入れて、敵と身体からだの擦合うばかり
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うららかなる空をば一群ひとむれはと輪をつくりて舞うが、姉上とわれとむかいあえるにれて、恐気おそれげなく、此方こなたの軒、彼方かなたの屋根にさっおろしては翼を休めて、ひさしにも居たり。物干場の棹にも居たり。棟にも居たり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
恐気おそれげもなく言放てる、片頬に微笑えみを含みたり。
琵琶伝 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)