怱々そうそう)” の例文
半七は時々うしろを見かえりながら善光寺門前へさしかかると、源次は怱々そうそうに仕事を片付けたと見えて、やがてあとから追って来た。
半七捕物帳:54 唐人飴 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お茶が終ると怱々そうそうに席を外して引取って行ったが、井谷は二人が立ち去ると直ぐ、遠のいて行く雪子の後影に眼をりながら
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その男は、個人的な関係から大事が壊れるといけない、三十六計逃げるにしかずと、怱々そうそうに引越してしまった。
(新字新仮名) / 宮本百合子(著)
人誰か故郷を思わざらん、誰か旧人の幸福を祈らざる者あらん。発足の期、ちかきにあり。怱々そうそう筆をとって西洋書中の大意を記し、他日諸君の考案にのこすのみ。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
君のように怱々そうそうと読むンではない。君の姿を空想して読むのだ。僕の送った弐拾円ばかりの金が、よっぽどこたえたらしいが、何かあるのだろうとは思っていた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
左衛門夫婦も挨拶に出て雑談に時を費したがいつもの時刻に近付くと怱々そうそう夫婦は引き退り後には主馬と朋輩の武士と忠蔵達が五、六人店を通して土間の見える職人部屋に残っていた。
日置流系図 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
で、私は怱々そうそうとまた帰途につくのだった。
彼はあたりの人に気を置くようにきょろきょろと見廻しながら、紋七やお浜親子に挨拶して怱々そうそうに出て行った。半七はすぐに子分を呼んだ。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それに幸子も渋谷の本家を訪ねたことがないのだから、ちょうど好い機会でもある、と云うことになって、幸子と雪子と悦子の三人で八月怱々そうそうに立つ積りでいたところ
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「太い奴、好うも朝鮮人になりすましおった。」そして、怱々そうそうにして土地を立たせろと命じた。
とて彼方あっちいって茶屋で飲食のみくいしようと云うことは叶わぬから、例の通り前の晩に魚の残物ひけものを買て来て、そのほか、氷豆腐だの野葉物やさいものだの買調かいととのえて、朝早くから起きて怱々そうそうに拵えて
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
飯を食ってしまうと、二人は怱々そうそうにここを出て、新堀の川伝いに、豊海橋から永代僑の方角へぶらぶら歩いて行った。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
目的を達して怱々そうそう引き揚げようとする間際まぎわに、それまで観客席の何処かに潜んでいた奥畑に抑えられたと云う訳であろう、奥畑はいつから入場していたのか分らないが
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
こんな化け物屋敷に長居はできない、帰ってくれと云われたのを幸いに、喜右衛門はうずら籠をかかえて怱々そうそうに表へ逃げ出した。雨はまだ降っている。
半七捕物帳:41 一つ目小僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
病気を押して面会した幸子はいつになく無愛想にあしらい、怱々そうそうに帰してしまったのであったが、それに気を悪くしたのか、あれきり丹生夫人は訪ねて来たことがなかった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
年下の女にからかわれて、この場合、お徳も少しむっとしたが、そんなことを云い争っている時でもないので、かれはそれを聞き流して怱々そうそうに帰った。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
幸子は自分も怱々そうそうに立つとして、姉にどう云う挨拶あいさつをして行ったものか当惑したが、どう考えてもこの場合をうまく云い繕う口実がないので、いくらか変に思われても仕方がないと度胸を極めて
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その声が哀れにさびしく、この世の人とは思われないので、気の弱い者は耳をふさいで怱々そうそうに逃げ去るのである。
貞之助は相手の如才ない言葉にほっとして、用談を終えると怱々そうそうに辞したが、井谷は玄関へ送って出ながらも、気を悪くしているどころではない、自分こそ済まないと思っていると繰り返して云った。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
用人の返事を待つあいだも、絶えず屋敷内の様子に気を配っていて、形勢不利となったのを早くも覚ったらしく、隙を窺って怱々そうそうに逃げ去ったのである。
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
で、沢崎が食事を済ますと怱々そうそう
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
殊に病い挙げ句のからだで、今ごろから怱々そうそうに出て行ったのは、なにかうしろ暗い身の上であるに相違ない。
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのうちに近所の者が起きて来るらしいので、怱々そうそうにそこを逃げ出して、二人は無事に牛込へ帰りました。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
幸次郎の耳に口をよせて何か云い聞かせると、かれはうなずいて怱々そうそうに別れて行った。半七はその足で山卯の店へ行って、番頭にことわって喜平を表へ呼び出した。
半七捕物帳:43 柳原堤の女 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すねに疵もつ彼はなんだか急に怖くなって、とんだ連坐まきぞえを食ってはならないと怱々そうそうに逃げて帰った。
半七捕物帳:38 人形使い (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二人は怱々そうそうに飯を食ってここを出た。鰻縄手へゆく途中で、半七はまた云い出した。
その枕もとで手帳を取り出すわけにも行かないので、わたしは怱々そうそうに帰って来た。
そのうちに世間がそうぞうしくなって来たので、眼をさますと、もう夜は明けている。となり近所の茶屋では店をあけはじめる。驚いて怱々そうそうに飛び出したが、庄さんも藤さんも見えねえ。
半七捕物帳:45 三つの声 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それを見て、男同士はなにか小声で云いながら、怱々そうそうに引っ返してしまいました
そうして、あたしはお前をさんざん可愛がって上げたんだからね、きょうを命日に線香の一本も供えておくれよと、にっこり笑ったので、小勝は蒼くなって怱々そうそうに逃げ出したと云います。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ここでいつまで争っても水掛け論であると諦めて、半七は怱々そうそうにここを出た。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
惣八は首をちぢめて怱々そうそうに門を出た。外にはもう雨がふり出していたが、お葉は傘を持ってゆけとも云わなかった。惣八が横町の角を曲がったかと思うころに、時雨しぐれは音をたてて降って来た。
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
さなきだにこの頃はいろいろの噂が立っている折柄であるから、二人はきもを冷やして怱々そうそうに駈けぬけてしまったが、鉄物屋の伜はその晩から風邪かぜを引いたような心持で床に就いているというのである。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
こうなると怖い方が先に立って、彼は怱々そうそうにそこを逃げ出した。
半七捕物帳:52 妖狐伝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
二人は隅のほうに小さくなって、怱々そうそうに飯をくってしまった。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
半七から探索の方針を授けられて、善八も怱々そうそうに出て行った。
仙吉は怱々そうそうに出て行った。
半七捕物帳:27 化け銀杏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
怱々そうそうに逃げ出しました。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)