むこ
「——ただいま」 「おや、おかえんなさいまし」 詮吉が書類鞄をかかえたまま真直二階へあがろうとすると、唐紙のむこうから小母さんがそれを引止めるように声をかけた。 「——ハンカチをかわかしておきましたよ」 「ああそうですか……ありがとう」 詮 …