急拵きゅうごしら)” の例文
しかしこう云う学問はなかなか急拵きゅうごしらえに出来るはずのものでないから、少しずつ分かって来れば来る程、困難を増すばかりであった。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
千「あれはお箱の蓋の棧がれましたから、米搗こめつき權六ごんろく殿へ頼みまして、急拵きゅうごしらえに竹篦たけべらを削って打ってくれましたの」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頂上の部屋から、急拵きゅうごしらえの足場を組んで、賊を逮捕しようという説も出たが、賊のポケットにはピストルがある。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ジュリアは事務室の中で、急拵きゅうごしらえのベッドの上に寝かされていた。枕頭ちんとうには医学博士蝋山教授が法医学とは勝手ちがいながら何くれとなく世話をしていた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
神の森には急拵きゅうごしらえの幾個かの小屋が出来ていて「剣の舞」だの「相撲」だのの太夫連が既に掛かっていた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
急拵きゅうごしらえの茶店からは大声に客を呼んでいた。それは花と人間との接触ではなかった。人間と人間との接触! まるで、人間の洪水を見に来ているようなものだった。
仮装観桜会 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
てっきり急拵きゅうごしらえの間に合せものに過ぎないのだが、間に合せものにしろ何にしろ、僅か一時いっときの間にこれだけの旗幟をととのえ、それにおのおの、れっきと各大名の旗印
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
此辺には滅多に見た事も無い立派な輿だ。白無垢の婦人、白衣の看護婦、黒い洋服の若い医師、急拵きゅうごしらえの紋を透綾すきやの羽織にった親戚の男達、其等が棺の前後に附添うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこに収めてあった筈の武具やその他の嵩張かさばった荷物が戦争のためにことごとく取り出されてしまったらしく、土間の大部分ががらんどうになっていて、一方の隅に急拵きゅうごしらえで拵えたかまどが築いてある。
と差出したのは、急拵きゅうごしらえらしい結び文。
総髪を左右に押分けた急拵きゅうごしらえの張孔堂正雪。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)