よろこ)” の例文
かかれば何事にも楽むを知らざりし心の今日たまたま人の相悦あひよろこぶを見て、又みづからよろこびつつ、たのしの影を追ふらんやうなりしは何の故ならん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
右に折れて下り気味に一町ばかり行くと、広い鞍部が竜バミ谷の方面へ豁然と開けて、程よく配置された若い唐松の林などが目をよろこばせる。
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
これが新らしい春の日の光に耀かがやいて、黒い土の上に咲いているのを見て、眼をよろこばしめなかった人はなかったろう。そうすれば必ず名があったはずである。
庄太夫大いによろこび、二八よくも説かせ給ふものかな。此の事我が家にとりて二九千とせのはかりごとなりといへども、香央かさだは此の国の貴族にて、我は氏なき三〇田夫でんぷなり。
前和歌山県知事川村竹治が何の理由なく国会や県会議員に誓うた約束をたちまちほぐして予の祖先来数百年奉祀し来った官知社を潰しひとえに熊楠をおこらせてよろこぶなどこの類で
曇りなきよろこびはなく
さて緊那羅ももと馬芸や歌舞を業とした部民で、その女が自分らより優等な乾闥婆部にめとらるるを、あたかも乾闥婆部の妻女が貴人に召さるるを名誉と心得て同然によろこんだので
院、手をつてよろこばせ給ひ、かの讐敵あたどもことごとく一三三此の前の海に尽すべしと、御声谷峯にひびきて、すざましさいふべくもあらず。魔道の浅ましきありさまを見て涙しのぶにへず。
七九ぱんをわけて、ともに過活わたらひのはかりごとあらんと、たのみある詞に心おちゐて、ここに住むべきに定めける。彦六、我が住むとなりなる破屋あれやをかりて住ましめ、友得たりとてよろこびけり。
従来誰も彼も往きて遊び散策し、清浄の空気を吸い、春花秋月を愛賞し得たる神社の趾が、一朝富家の独占に帰するを見て、誰かこれをよろこばん。貧人が富人をねたむは、多くかかることより出づるなり。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)