必竟つまり)” の例文
その時分じぶん夫婦ふうふ活計くらしくるしいつらつきばかりつゞいてゐた。宗助そうすけ流産りうざんした御米およねあをかほながめて、これ必竟つまり世帶しよたい苦勞くらうからおこるんだとはんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「怪物ぢや無い、人ですよ、人の大きいのです、必竟つまり、人が神様の小さいのと思やいですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その時分の夫婦の活計くらしは苦しいつらい月ばかり続いていた。宗助は流産した御米のあおい顔を眺めて、これも必竟つまりは世帯の苦労から起るんだと判じた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「君等に大人たいじんの心がわかつてたまるものか」と村井はくわつ一睨いちげいせり「泥棒の用心するのは、必竟つまり自分に泥棒根性こんじやうがあるからだ、世に悪人なるものなしと云ふのが先生の宗教だ、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「でも宅の事を始終淋しい淋しいと思っていらっしゃるから、必竟つまりあんな事をおっしゃるんでしょう」
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
耶蘇ヤソでも仏でも無宗教でも構ふことは無い、男は必竟つまり人物にあるのだ、さうぢや無いか、一夫一婦なんてことは、日本ではだ時期が早いよ——ぢや、君、今の篠田の一件を忘れないやうに
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)