まわ)” の例文
なかいてたら早う薬まわりますさかい、なるだけ余計べとことして、孰方どっちも相手の御飯の数勘定して競争で詰め込みますのんで
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
昨夜も彼女は冬子に、「死んだらどうなるのか」とたずねたり、「何だか悪い病気が身体中にまわっているようだ」
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
老人は白氏文集はくしもんじゅうを愛読していて、興に乗ずると、こんな工合に文句を暗誦するのであるが、これが出る時はそろそろ酒がまわって来た證拠であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雪子は先刻の白葡萄酒が今になってまわって来たらしくて、両ほおにぽうッと火照ほてりを感じながら、もう阪神国道を走っている車の窓から、微醺びくんを帯びたチラチラする眼で
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その間に御牧はウィスキーの角罎をひとりで三分の一程平げてなお自若たる有様であったが、それでも酔いがまわるにつれて剽軽ひょうきんになり、時々奇抜な警句を吐いて皆を笑わせた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ぐびりぐびりと大杯を傾けて、其の太ったあから顔には、すでに三分の酔いがまわって居ます。
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
客人たちの座に着いたのがさるの刻を少し過ぎた時分で、宴が開かれると間もなく日が暮れたが、その晩は特に酒杯の進行が激しく、主客共に酔いのまわり方が速かであったのは
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
己の体にはブランデエの酔いがまわって来て、襟元から汗がびっしょりとみ出て居るので、己はしばら眩暈めまいのするような、息の詰まるような気持ちに襲われたが、その気持ちが又
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
手術の時に何か悪性の黴菌ばいきんが這入って、その毒が脚の方へまわったものであるらしかった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
幅の狭い肩をいよいよ紙雛かみびなのように縮めていたが、野村は酔がまわるにつれてだんだん饒舌じょうぜつになって行くのが、雪子と云うものを眼の前に見ている結果の、興奮のせいでもあるらしかった。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
酔いのまわった夷顔えびすがおをてか/\させて、「えへゝゝゝ」と相好そうごうを崩しながら、べら/\と奇警な冗談を止め度なく喋り出す時が彼の生命で、滅法めっぽう嬉しくてたまらぬと云うように愛嬌のある瞳を光らせ
幇間 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)