御食みけ)” の例文
御食みけむかふ」は、御食みけに供える物の名に冠らせる詞で、此処の南淵山みなぶちやまに冠らせたのは、蜷貝みながいか、御魚みなかのミナの音にってであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ぜひなく、権大ノ局も小宰相も、そのまま艫の端で、御食みけの支度をつづけていたが、追捕船ついぶぶねから射て来る矢は、はや幾筋もそこらに刺さった。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでこの神の御名を稱えて御食みけつ大神と申し上げます。その神は今でも氣比の大神と申し上げます。またそのイルカの鼻の血が臭うございました。
道清みちきよめの儀といって、御食みけ幣帛みてぐらを奉り、禰宜ねぎ腰鼓ようこ羯鼓かっこ笏拍手さくほうしをうち、浄衣を着たかんなぎ二人が榊葉さかきはを持って神楽かぐらを奏し、太刀を胡籙やなぐいを負った神人かんどが四方にむかって弓のつるを鳴らす。
顎十郎捕物帳:23 猫眼の男 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
『夕べの御食みけ奉りし後は、何参らせん品もございません』
にらみ鯛 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
「うかと、里へ出ても危ない。……さて、どこかにお休みをねごうて、御食みけでもさしあげられる小屋でもあればよいが」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御食みけむかふ南淵山みなぶちやまいはほにはれる斑雪はだれのこりたる 〔巻九・一七〇九〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ここに御子、神に白さしめたまはく、「我に御食みけ給へり」とまをしたまひき。かれまたその御名をたたへて御食津みけつ大神とまをす。かれ今に氣比けひの大神とまをす。またその入鹿魚いるかの鼻の血くさかりき。
供御くごもその夜は格べつな御食みけが進められ、山のわらびや川魚をさかなに、帝は三名の妃をお相手に深く酔われたらしい。侍者の催馬楽歌さいばらうた嫋々じょうじょうと哀れに聞えた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分のすぐ後ろで御食みけの器を洗っていた小宰相の姿が、一瞬に見えなくなっていたからである。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜の御食みけにはまた、あたたかな椀の物が加えられ、やがて御寝ぎょしも新たなのが調進された。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御食みけがすむ。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)