御這入おはい)” の例文
手持無沙汰てもちぶさたなので、向うで御這入おはいりというまで、黙って門口かどぐちに立っていた滑稽こっけいもあった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さあ、この中へ御這入おはいりなさい。蚤も蚊もいません」と鼻のさきへ突きつけた。驚くか、恥ずかしがるか、この様子では、よもや、苦しがる事はなかろうと思って、ちょっと景色けしきうかがうと
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「しかしあなたの垣根のそとへ来て立っているのは向うの勝手じゃありませんか、話しが聞えてわるけりゃもっと小さい声でなさるか、もっと大きなうちへ御這入おはいんなさるがいいでしょう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余は今この四角な家の石階の上に立って鬼の面のノッカーをコツコツとたたく。しばらくすると内から五十恰好かっこうの肥った婆さんが出て来て御這入おはいりと云う。最初から見物人と思っているらしい。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
若い坊さんが「御湯に御這入おはいり」と云う。主人と居士は余がふるえているのを見兼て「こう、まず這入れ」と云う。加茂かもの水のとおるなかに全身をけたときは歯の根が合わぬくらいであった。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
是非御這入おはいんなさいって、勧めているんでしょう、——いろいろわけを言って、こう云う利益があるの、ああ云う利益があるのって、何でも一時間も話をしたんですが、どうしても這入らないの。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いえ何……まあ御這入おはいんなさい。さあ」と片足を部屋のうちへ引く。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「もう好い加減に御這入おはいりよ。風邪かぜでも引くといけないから」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「じゃ、まあ御這入おはいり。ゆっくり御茶でもんで話すから」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「はあ、御這入おはいり」と云ったなり、出てくる景色けしきもない。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おい、御這入おはいり」と云ったぎり坐っている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御這入おはいりなさい。ちっとも構いません」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「御湯に御這入おはいんなさらないからですよ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)