御宴ぎょえん)” の例文
そのむかし、この顕家もまだ十四歳の左中将の若者であったころ、北山殿どの行幸みゆきに、花の御宴ぎょえんばいして、陵王りょうおうの舞を舞ったことがある。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こうしましょう、ね、セエラ。あなたは宮様プリンセスで、これは宮中きゅうちゅう御宴ぎょえんなの。」
むろん政治上の事にかかわる範綱ではないから、和歌のお相手や、稀に、御宴ぎょえんの端につらなるくらいの程度であった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おまえは先ごろ、月輪公の御宴ぎょえんに招かれたそうだが、あのやかたには美しい女がたくさんいるだろうな。……待てよ、そう訊ねても盲人ではわかるまい。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「きょうは折角の御宴ぎょえんです。かたくるしい国政向きのことなどは、席を改めて、他日になすっては如何です。とかく酒気のあるところでは、論議はまとまりません」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おのれ、それには、今日の御所の御宴ぎょえんで、姫君がさるお方からいただいた伽羅きゃら銘木めいぼくが入っているのじゃ、下人などが手にふれたら、罰があたるぞ、返やせ、返やせ!」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかも初雪の御宴ぎょえんとはこれも近ごろ珍しい。護良もりながなど御会ぎょえのおめしにあずかったことはない」
こんな雨もりだらけな屋根の下で、年じゅう、芋粥いもがゆ稗飯ひえいいばかりをかみつぶし、秋といっても、月見の御宴ぎょえんに伺えるではなし、春が来ても、豊楽殿ほうらくでんのお花見などは、他人のこと。
朝廷の御宴ぎょえんの折、赤裸になって丞相を辱めた禰衡ねいこう——あの奇舌学人とは——古くから親交がありまして、禰衡にあんな悪戯わるさをさせたのも、後で聞けば、孔融の入れ智慧だったということです
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あの琵琶も御宴ぎょえんいておるものか。そしてそも、はたれか?」
「まさに、長夜の御宴ぎょえんにふさわしい晩ですな」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)