御叮嚀ごていねい)” の例文
心細こゝろぼそ御身おんみなればこそ、小生おのれ風情ふぜい御叮嚀ごていねいのおたのみ、おまへさま御存ごぞんじはあるまじけれど、徃昔そのかみ御身分ごみぶんおもひされておいたはしゝ、後見うしろみまゐらするほど器量きりやうなけれど
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
重兵衛 なるほど炭焼にゃあ相違ねえが、御叮嚀ごていねいに黒とことわるにゃあ及ばねえ。口の悪い奴だ。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
世の中は広いものです、広い世の中に一本の木綿糸もめんいとをわたして、傍目わきめも触らず、その上を御叮嚀ごていねいにあるいて、そうして、これが世界だと心得るのはすでに気の毒な話であります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三「えい御叮嚀ごていねいでは困ります、数寄屋町の三八で」
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
露助ろすけが大連を引上げる際に、このまま日本人に引渡すのは残念だと云うので、御叮嚀ごていねいに穴を掘って、土の中にめて行ったのを、チャンが土のにおいいで歩いて、とうとう嗅ぎあてて
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
哈爾賓ハルピンに行く途中で、木戸さんに聞いた話だが、満洲の黄土はその昔中央亜細亜アジアの方から風の力で吹き寄せたもので、それを年々河の流れが御叮嚀ごていねいに海へ押出しているのだそうである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)