後暗うしろめた)” の例文
祖母としよりそばでも、小さな弟と一所でも、胸に思うのもはばかられる。……寝て一人の時さえ、夜着の袖をかぶらなければ、心に描くのが後暗うしろめたい。……
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
くて幸豐君ゆきとよぎみもくげて、一國いつこく老職らうしよくとなさむとおもはれけるが、もとより亂世らんせいにあらざれば、取立とりたててこれぞといふてがらかれきものを、みだりにおももちゐむは、偏頗へんぱあるやうにて後暗うしろめた
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なつかしい姿を見るにつけても、お蔦に思較べて、いよいよ後暗うしろめたさに、あとねだりをなさらないなら、久しぶりですから一銚子ひとちょうし、と莞爾にっこりして仰せある、優しい顔が、まぶしいように後退しりごみして、いずれまた
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)