広場ひろっぱ)” の例文
旧字:廣場
死んだのは鼓ヶ嶽の裾だった。あの広場ひろっぱの雑樹へさがって、が明けて、やッと小止こやみになった風に、ふらふらとまだ動いていたとさ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
で、二台、月に提灯かんばんあかり黄色に、広場ひろっぱの端へ駈込かけこむと……石高路いしたかみちをがたがたしながら、板塀の小路、土塀の辻、径路ちかみちを縫うと見えて、寂しい処幾曲り。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お察し下さい、今でこそ話すが、こりゃ冥土めいどへ来たのかと思った。あの広場ひろっぱを手探りでどうするもんかね。……
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広場ひろっぱを抜けると大きな松の木と柳の木が川ぶちにある、その間から斜向はすかいに向うに見えらあ、可いかい。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御堂みどう横からはすの池へ廻る広場ひろっぱ大銀杏おおいちょうの根方にむしろを敷いて、すととん、すととん、と太鼓をたたいて、猿を踊らしていた小僧を、御寮人お珊の方、扇子を半開はんびらきか何かで、こう反身で見ると
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左手ゆんでみさき蘆原あしはらまで一望びょうたる広場ひろっぱ、船大工の小屋が飛々とびとび、離々たる原上の秋の草。風が海手からまともに吹きあてるので、満潮の河心へ乗ってるような船はここにおいて大分揺れる。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)