年紀上としうえ)” の例文
火の玉め、鍍金の方が年紀上としうえで、わっしあ仏の銀次だなんて、はじめッから挨拶がしゃくに障ったもんだから、かねてそのつもりだったと見えまさ。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と聞いてうなずくのを見て、年紀上としうえだけに心得顔こころえがおで、あぶなっかしそうに仰向あおむいて吃驚びっくりしたふうでいる幼い方の、獅子頭ししがしら背後うしろへ引いて
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
死のうとした日の朝——宗吉は、年紀上としうえかれの友達に、顔をあたってもらった。……その、明神の境内で、アワヤ咽喉のんどに擬したのはその剃刀であるが。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馴染なじみになって、元老の娘が、五つばかり年紀上としうえだが優しいおんなで、可愛い小僧だから、ついしたしんで、一日あるひ、能会の日、中食ちゅうじきの弁当を御馳走して、お茶を入れて二人で食べていた。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
寄居虫やどかりで釣る小鰒こふぐほどには、こんな伯父さんに馴染なじみのない、人馴れぬ里の児は、目を光らすのみ、返事はしないが、年紀上としうえなのが、の手を止めつつ、けろりで、合点の目色めつきをする。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たしかにその人、我が年紀とし十四の時から今に到るまで一日も忘れたことのない年紀上としうえの女に初恋の、その人やがて都の華族に嫁して以来、十数年間一度ひとたびもその顔を見なかった、絶代ぜつだい佳人かじんである。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)