常着ふだんぎ)” の例文
君女は吾々と違って洋服一点張りじゃいけないのだ、これから時候は寒さに向って、加之しかのみならず常着ふだんぎからすべてを新調して世帯道具を揃えることは中々容易じゃないよ
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
と膝に手を突いて起上りますると、鼠小紋ねずみこもん常着ふだんぎ寝着ねまきにおろして居るのが、汚れッが来ており、お納戸色なんどいろ下〆したじめを乳の下に堅くめ、くびれたように痩せて居ります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
新子は、次の朝郭公かっこうとミヒヒという山羊の声で眼がさめた。腕時計を見ると、六時少し前であったけれど、彼女はそのまま起きて、やや肌寒いのでセルのサッパリした常着ふだんぎに着かえて庭へ出た。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
常着ふだんぎのままでございます。黒っぽい銘仙めいせんなのです」
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
衣装なり常着ふだんぎだからくはございませんが、なれども村方でも大尽だいじんの娘と思うこしらえ、一人付添って来たのは肩の張ったおしりの大きな下婢おんなふとっちょうで赤ら顔、手織ており単衣ひとえ紫中形むらさきちゅうがた腹合はらあわせの帯
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)