“帯(も)” の例文
旧字:帶
奥様があの艶(つや)を帯(も)った目を細くなすって葡萄酒を召上るさまも、歯医者が例の細い白い手を振って楽しそうに笑うさまも、よく見えました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こうは言うものの、山本さん自身も、何処(どこ)かこう支那人臭いところを帯(も)って帰って来た。大陸風な、ゆったりとした、大股(おおまた)に運んで行くような歩き方からして……
船 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あの艶を帯(も)つた清(すゞ)しい眸(ひとみ)、物言ふ毎にあらはれる皓歯(しらは)、直に紅(あか)くなる頬——その真情の外部(そと)に輝き溢(あふ)れて居る女らしさを考へると、何時の間にか丑松はお志保の俤(おもかげ)を描いて居たのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
智慧(ちえ)の深そうな目の御色も時によると朦朧(どんより)潤みを帯(も)って、疲れ沈んで、物を凝視(みつめ)る力も無いという風に変ることが有ました。私は又た旦那様の顎(あご)から美しく白く並んだ御歯が脱出(はずれ)るのを見かけました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)