師範しはん)” の例文
四月四日、上田君うえだくん高橋君たかはしくんは今日も学校へ来なかった。上田君は師範しはん学校の試験しけんけたそうだけれどもまだ入ったかどうかはわからない。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
つまりは人が払底ふっていなためだったのでしょう。私のようなものでも高等学校と、高等師範しはんからほとんど同時に口がかかりました。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
粕谷かすやの夫妻が千歳村に移住いじゅうした其春、好成績こうせいせきで小学校を卒業し、阿爺は師範しはん学校がっこうにでも入れようかと云って居たのを、すすめて青山学院に入れた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そのプロレタリヤ何とかいう本を、たくさんとられとりました。あの稲川は師範しはんにいるときから本好きでしたからな」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「来年の春、高等師範しはんを受けてみることにした。それまでは、ただおってもしかたがないからここの学校に教員に出ていて、そして勉強しようとおもう……」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
親のある者、金のある者はなお学府の階段をよじ登って高等へ進み師範しはんへ進み商業学校へ進む、しからざるものはこの日をかぎりに学問と永久にわかれてしまった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私の家は、幸に竹早町の高等師範しはんに近いところにあったことの縁もあって、上の子供は、例外なく小学校時代はその附属ふぞくに入れて貰った。中学校時代も入れて貰ったのが多い。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
「三名とも、さすがは柳生の子息なり孫なり、いずれもよいつらだましいの若者とは見うけるが、して、石舟斎には、この家康が子息への師範しはんとして、このうちの誰をかわしへ推挙すいきょしたいと申すか」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前方から静かに静かにと声をらして来た体操教師に何ですと聞くと、曲り角で中学校と師範しはん学校が衝突しょうとつしたんだと云う。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そう、一ばんよくできるの。師範しはんへいくつもりのようだけど、少しおとなしすぎる。あれで先生つとまるかな」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
それから十日ほどたって、二人はその女の家を出て、士族屋敷しぞくやしきのさびしい暗い夜道よみちを通った。その日は女はいなかった。女は浦和に師範しはん学校の入学試験を受けに行っていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
人のそでくぐけて来た赤シャツの弟が、先生また喧嘩です、中学の方で、今朝けさ意趣返いしゅがえしをするんで、また師範しはんの奴と決戦を始めたところです
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
女学校の師範しはん科を出た正教員せいきょういんのぱりぱりは、芋女いもじょ出え出えの半人前の先生とは、だいぶようすがちがうぞ。からだこそ小さいが、頭もよいらしい。話があうかな。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
校長の背広せびろには白いチョークがついていた。顔の長い、背の高い、どっちかといえばやせたほうの体格で、師範しはん校出の特色の一種の「気取きどり」がその態度にありありと見えた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)