のぞ)” の例文
萩原から言わせるとこれらの虚無の世界で、たえず明りを見ようというのぞみこそ、彼の生涯をつらぬいた逞しい意欲であったのである。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
そんなのぞみしかないこと、いえ、なんの希みもないという身の凍るような、あまりの空白に目がつぶれてしまうような事実に、ほとんど恍惚としていました。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
然し八十円の報酬に目がくらんで、番人をのぞむ者は絶えた例がないと言う。いまだにそうか私は知らない。
流浪の追憶 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
私は自分の愛のいとちひさく、淺く、せまいのを、ぢ、おそれ、なげきます。私の今のくるしみは、私ん自分にのぞんでゐる愛のりなさを、かなしむ心に外ならないのです。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
『けれども、まだ三年しか経たないんですものね。』と、なにか大きな、彼女にはわからないけれども、なにか大きなのぞみを彼に話さなければならないやうに瞳を輝かした。
晩餐 (新字新仮名) / 素木しづ(著)
私は墓場の彼方に平和をのぞむ生活を一番いいような気がします。やはりこの世は仮りの宿というようなテンポラルな気がします。トルストイやナポレオンは今どうしてるだろう。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
よしや我彼が御手に殺さるるとも、我はなお、彼にのぞみをかけざるを得ざるなり。……
そればかりをのぞんでおりましたのに
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
凡てののぞみも、よろこびも
落葉 (新字新仮名) / 木村好子(著)
よしや我神の御手に殺さるるとも、我はなお、神にのぞみをかけざるを得ざるなり。……
女の美しいこと賢いことは初めからのぞまなかった。ただ一点愛において二人は確実に結合していると信じた。しかしながら本能的な愛は私の期待したごとくけっして鞏固きょうこではなかった。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
こういうアトリエに住んでみたいのぞみを持ったくらいだ。
我が愛する詩人の伝記 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
私は帝釈たいしゃくの三日の間にしだいにのぞみを恢復かいふくいたしました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)