しゅう)” の例文
高山右近が固むるところの岩崎山のふところも、未だこれを知らぬかのように、白雲の帯はしゅうをとざして、山上山下をなおひそとしていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背戸口せどぐちは、充満みちみち山霧やまぎりで、しゅうの雲をく如く、みきなかばを其の霧でおおはれた、三抱みかかえ四抱よかかえとちが、すく/\と並んで居た。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
成敗せいはいを度外において、白雲の自然にしゅうを出でて冉々ぜんぜんたるごとき心持ちで一局を了してこそ、個中こちゅうあじわいはわかるものだよ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しゅうとどまるもくも、岫を出ずるも雲、かいするも雲、別るるも雲、何をか一じょうを期せん。——おさらば、おさらば」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
生きてあらんほどの自覚に、生きて受くべき有耶無耶うやむやわずらいを捨てたるは、雲のしゅうを出で、空の朝な夕なを変わると同じく、すべての拘泥こうでいを超絶したる活気である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しゅうを出づ雲のゆくはいずこにや。西にそろか。東に候か。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)