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岫
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しゅう
高山右近が固むるところの岩崎山の
懐も、未だこれを知らぬかのように、白雲の帯は
岫をとざして、山上山下をなおひそとしていた。
背戸口は、
早や
充満た
山霧で、
岫の雲を
吐く如く、
幹の
半ばを其の霧で
蔽はれた、
三抱四抱の
栃の
樹が、すく/\と並んで居た。
成敗を度外において、白雲の自然に
岫を出でて
冉々たるごとき心持ちで一局を了してこそ、
個中の
味はわかるものだよ
「
岫に
停まるも
雲、岫を出ずるも雲、
会するも雲、別るるも雲、何をか一
定を期せん。——おさらば、おさらば」
生きてあらんほどの自覚に、生きて受くべき
有耶無耶の
累を捨てたるは、雲の
岫を出で、空の朝な夕なを変わると同じく、すべての
拘泥を超絶したる活気である。
岫を出づ雲のゆく
方はいずこにや。西に
候か。東に候か。