小店こだな)” の例文
五十五六まで小店こだなに勤めて、まだ獨身らしい老番頭が、何時の間にやら世を呪ひ自分を嘲けつて、惡魔的な棄鉢な氣持になつて行くのでせう。
千蔵も広島に小店こだなをかり教授とやら申ことに候。帰後はなしともつぶてとも不承候。げん直卿ちよくけい仍旧きうにより候。源十軽浮、時々うそをいふこと自若。直卿依旧きうにより候。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
この呉服屋の小店こだなの若い夫婦の間には、今年生れの可愛い男の子があって、虫のせいかその夜中に苦しがって気絶してしまったのを、若い女房は、その夜中であることも
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小店こだなを構えて、武具馬具の修繕つくろいなどを、表むきの生業なりわいとして、それを手ヅルに南都、叡山の僧兵やら、諸家へも出入りして、宮方のおうごきなどを、ひそと探っておるよしにござりまする
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此の男のうたって来るものは門付には誠に移りの悪い一中節ですから、裏店うらだな小店こだなの神さん達が耳を喜ばせることはとても出来ませんが、美男と申すので惣菜そうざいのおあしをはしけて門付に施すという
五十五六まで小店こだなに勤めて、まだ独身らしい老番頭が、いつの間にやら世を呪い自分をあざけって、悪魔的な捨鉢な気持になって行くのでしょう。
そうして小店こだなでも開いて、町人になってしまおうかとも思わせられました。そうでなければ髪を剃りこぼって、こんなお寺のお小僧になってしまった方が気楽だろうとも考えさせられました。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「わたしはもうこれまでの体だから、これからお前を養女にして、町人でいいから堅そうな養子を見立てて、小店こだなの一軒も出すようにして、お前の世話になって畳の上で死ねるようになりたい」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小店こだなには、日々に空家あきやえて、大店おおだなは日に日に腐ったまま立ち枯れて、人の住まなくなった楼の塗格子ぬりごうしや、め果てた水色の暖簾のれんに染め出された大きな定紋じょうもんあかづいてダラリと下った風情ふぜいを見ると