家並いえなみ)” の例文
旧字:家竝
私たちの通る道は段々にぎやかになった。今までちらほらと見えた広いはたけの斜面や平地ひらちが、全く眼にらないように左右の家並いえなみそろってきた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ままよ——横っ飛びに飛んで、侍町の生垣いけがきの下を鼠のように走ると、御用の声を聞き伝えた家並いえなみが騒ぎ出す。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それから左右の家並いえなみを見ると、——これは瓦葺かわらぶき藁葺わらぶきもあるんだが——瓦葺だろうが、藁葺だろうが、そんな差別はない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
家並いえなみの人が戸を押しあけて、通りへ飛び出してののしる。その中で
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
この男のうちはどこにあったか知らないが、どの見当けんとうから歩いて来るにしても、道普請みちぶしんができて、家並いえなみそろった今から見れば大事業に相違なかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
家並いえなみの立て込んだ裏通りだから、山の手と違って無論屋敷を広く取る余地はなかったが、それでも門から玄関まで二間ほど御影みかげの上を渡らなければ
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人間の運動が東京よりも溌溂はつらつと自分の眼を射るように思われたり、家並いえなみが締りのない東京より整って好ましいように見えたり、河が幾筋もあってその河には静かな水が豊かに流れていたり
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いまだにい町になり切れないで、がたぴししているあのへん家並いえなみは、その時分の事ですからずいぶん汚ならしいものでした。私は露次ろじを抜けたり、横丁よこちょうまがったり、ぐるぐる歩きまわりました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)