客室きゃくま)” の例文
「室は広い室で、客室きゃくまにわざわざこしらえたものでございますが、怪しいことがありますから、何人も入れないことにしてあります」
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
主税はあとで座敷を出て、縁側を、十畳の客室きゃくまの前から、玄関の横手あたりまで、行ったり来たり、やや跫音あしおとのするまで歩行あるいた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
余も何をか躊躇ためらき目科の後に一歩も遅れず引続きて歩み入れば奥のと云えるは是れ客室きゃくまと居室と寝室ねまとを兼たる者にして彼方の隅には脂染あかじみたる布を以て覆える寝台ねだいあり、室中何と無く薄暗し
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
座敷は——こんな貸家建かしやだてぢやありません。壁も、床も、皆彩色さいしきした石を敷いた、明放あけはなした二階の大広間、客室きゃくまなんです。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ちょうどその横が十畳で、客室きゃくまらしいつくりだけれども、夫人はもうそこを縁づたいに通越して、次の(菅女部屋)から
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
また全館のうち、帳場なり、客室きゃくまなり、湯殿なり、このくらい、辞儀じぎ斟酌しんしゃくのいらない、無人むにんきょうはないでしょう。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
客室きゃくまに通りて待たるれば、侍女こしもとふすまを開かせ、貞子のかた静々と立出たちいでらる。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)