安中あんなか)” の例文
忽ち、徳川家の武士の知るところとなって、曠野こうやから赤城の山へ走ったが、途中、安中あんなかの城下で、井伊直政の家中の手に捕われてしまった。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから安中あんなか宿に続く古い並木を抜けた途上であったと思う。一つの小学校のあるのを発見した。そこでいよいよ商売に取りかかることになった。
酒徒漂泊 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
このお関所を預かるものは安中あんなかの板倉家で、貧乏板倉と呼ばれた藩中の侍も、この横川の関所を預かる時は、過分のうるおいがあったということです。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今宵こよひ来て泊つてゐる赭顔の安中あんなか大佐も、小男の宇都宮中佐も、主人の流義が好いと云ふので、内でも人の処に泊つても、服装一切はそばを離さないのである。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
寺は安中あんなかみちを東に切れた所で、ここら一面の桑畑が寺内まで余ほど侵入しているらしく見えた。しかし、由緒ある古刹こさつであることは、立派な本堂と広大な墓地とで容易に証明されていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
へんになつてなくなつたといひます——上州じやうしう安中あんなか旅藝者たびげいしやをしてゐたとき親知おやしらずでもらつたをんな方便はうべんぢやありませんか、もう妙齡としごろで……かゝへぢやあありましたが、なか藝者げいしやをしてゐて
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「それじゃ安中あんなかですか?」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
高崎は松平右京亮うきょうのすけ、八万二千石の城下。それより坂鼻へ一里三十丁。坂鼻から安中あんなかへ三十丁下り。ここは坂倉伊予守、三万石の城下。安中から松井田へ二里十六丁。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
安中あんなか侯節山板倉勝明撰の墓碑銘に、忠次郎の道号として、豊洲、花亭、醒翁、詩癡、又括嚢くわつなう道人が挙げてある。此中で豊洲、花亭、醒翁の号が茶山の集に見えてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
安中あんなか父子は又
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この話をして間もなく、お父様の心安くしていらっしゃる安中あんなかという医者が来て、或る大名華族の末家まっけの令嬢を貰えと勧めた。令嬢は番町の一条という画家の内におられる。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)