しな)” の例文
二十歳はたちか二十一、二とも思われる、女の姿のまた窈窕あでやかさ! しなやかな首筋はすんなりと肩へ流れて、純白女神のごとき白絹の綾羅うすものを装うていた。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
なかでも、長身なあなたが、若い鹿しかのように、しなやかな、ひきしまった肉体を、リズミカルにゆさぶっているのが、次の一廻り中、眼にちらついています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
薙刀なぎなたの折れでもあるような細いなたが、彼女のしなやかな手に振上げられた。あっと、武蔵が息をむ間に、はやその鉈の刃は、琵琶のこばへ深く入っていた。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
暖かな、小さな手がしずかに這いよって来て、細い、しなやかな指が、すんなりと竜太郎の指に絡みついた。
墓地展望亭 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
看病婦と申して、どうも婦人の方が手当りが宜しい、男の骨太の手で抱き上げられると痛いが、婦人のしなやかなむッくりした手や何かですと余程心持がいと云います。
弱腰をしなやかに、白い指をそらして折って取った。
しなえて見ゆるも哀れなるに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
伯爵に見められたというだけあって、水々しいひとみ、魅力的なうるみを帯びた睫毛まつげ、どこか雌豹めすひょうしのばせるしなやかな脚! 豪奢なミンクの毛皮をまとって、傍らに虎の膝掛けを置いて
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)