如露じょうろ)” の例文
……なにしろ、馬の尻尾てえやつは如露じょうろで水を撒いて芽を出させるというわけにはゆかない。江戸中のお屋敷じゃおお迷惑。
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
家の戸口は開かれて、くわすき如露じょうろなぞは、きいろ日光ひかげに照されし貧しき住居すまいの門の前、色づく夕暮のうちよこたはりたり。
植木屋の娘達は、いずれも素足に尻端折しりはしょりで、威勢よく井戸の水をんでいるのもあれば、如露じょうろで花にそそいでいるのもあった。三吉は自分の子供にった。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ガランガランという振鈴ふりりんの音を合図に、さしも熱しきっていた群衆もゾロゾロ引挙げる。と、小使らしい半纒着はんてんぎの男が二人、如露じょうろほうきとで片端から掃除を始める。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
空に持ち去られた黄葉の竜巻は如露じょうろ形のまゝ高く遠く移り過ぎて行きましたが、拡がりぼけて見えなくなったかと思うと、あれ、あれ、あれ、何か別な一群が吹き寄って来ました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
三階の窓から見下みおろすと、狭い通なので、門前のみちが細く綺麗きれいに見えた。向側は立派な高塀たかべいつづきで、その一つのくぐりの外へ主人あるじらしい人が出て、如露じょうろ丹念たんねんに往来をらしていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
如露じょうろで水を沢山にかけるので、カンテラの光が映ってきらきら光ります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
如露じょうろ——そうは行くめえ。おいらの料簡りょうけんひとつで、雨が降るんだ。