奈良茂ならも)” の例文
奈良茂ならも紀文きぶん難波屋なんばや淀屋よどやなどという黄金こがねの城廓によるものが、武人に対立しだしている。小成金しょうなりきんはその下に数えきれないほど出来た。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おまけに奈良茂ならもがそのあとから、「かうなるとわれおれとはかたき同志や。今が今でも命のやりとりしてこまそ」つて、笑つたと云ふんだから機会きつかけが悪い。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それはそれとして、日本の上流社会の一番ドエライところを代表したのがこれ位のところで、紀文きぶん奈良茂ならもの昔語りよりも大分落ちるようである。
覚えたり、旦那とか通人とか言われる頃は、気の毒なことに没落が控えている。紀文も奈良茂ならもも、跡は残っちゃいない
吉原で馬鹿な遊びをするから奈良茂ならものほうがよく知れているが、金のあるだんになったら、万屋和助は奈良茂の十層倍、茂森町しげもりちょう三町四方をそっくり自分の屋敷にし
顎十郎捕物帳:20 金鳳釵 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
紀文、奈良茂ならもの馬鹿共といえどもよくせざるところ、鐚の計画の奇抜なるには、さすがの神尾も、ちょっと面負けの形で眼をみはると、鐚はいよいよ乗気になって
そりや新聞に出てゐた通り、南瓜かぼちや薄雲太夫うすぐもだいふと云ふ華魁おいらんれてゐた事はほんたうだらう。さうしてあの奈良茂ならもと云ふ成金なりきんが、その又太夫たいふに惚れてゐたのにも違ひない。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いきなり奈良茂ならもの側にあつた鮫鞘さめざや脇差わきざしひつこぬいて、ずぶりと向うの胸へつつこんだんだ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)