奈翁ナポレオン)” の例文
博士 これは、仏国の大帝奈翁ナポレオンが、西暦千八百八年、西班牙スペイン遠征の途に上りました時、かねて世界有数の読書家。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
救われずして地獄の九圏の中に阿鼻叫喚しているはずの、たとえば歴山アレキサンドル大王や奈翁ナポレオン一世のごとき人間がかえって人生究竟の地を示したか。これは未決問題である。
霊的本能主義 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
そうしてその大きくうるみを持った黒眼勝ちの眼と、鼻筋の間と、子供のように小さな紅い唇の切れ込みとのどこかに、大奈翁ナポレオンの肖像画に見るような一種利かぬ気な
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
奈翁ナポレオンの云い草ではないが、彼のうかがったもので、ついぞ彼の手に入らなかったものなんか一つもなかったぐらいだから、或いは頭脳の絶対的よさくらべをして見ると
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
また近きは奈翁ナポレオン三世の時代の仏蘭西フランスも果して共和国であったか帝国であったか判断に迷う位である。
平民道 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「どうも京都人は意気地が無くつてかん。」山本氏は一段と声を張りあげた。「その証拠には、京都からは偉い人物といつては少しも出てらん。奈翁ナポレオンは百戦百勝の英雄だつた。 ...
中には真実めし艶書えんしょを贈りてき返事をと促すもあり、また「君徐世賓じょせいひんたらばわれ奈翁ナポレオンたらん」などと遠廻しにふうするもありて、諸役人皆しょう一顰一笑いっぴんいっしょううかがえるの観ありしも可笑おかしからずや。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)