夜討ようち)” の例文
無々という老翁の石城いしき郡に住する者、かつて残夢を訪ねてきて、二人でしきりに曾我そが夜討ようちの事を話していたこともあった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
東京驛とうきやうえき一番いちばんてば、無理むりにも右樣みぎやう計略けいりやくおこなはれないこともなささうだが、籠城ろうじやう難儀なんぎおよんだところで、夜討ようち眞似まねても、あさがけの出來できない愚將ぐしやうである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何か、そこへまいったせつな、身ぶるいのわくような虚相と実相の両面に圧し挟まれた気がしました。ゆめゆめそれへ夜討ようち朝駈けなどの奇兵を出すべきではありません。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「森蘭丸? 森蘭丸というのは、織田信長の家来けらいでしょう。そして、明智光秀が本能寺に夜討ようちをかけたとき、槍をもって奮戦し、そして、信長と一緒に討死うちじにした小姓こしょうかなんかのことでしょう」
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
昼飯ひるの支度は、この乳母うばどのにあつらえて、それから浴室へ下りて一浴ひとあみした。……成程、屋の内は大普請らしい。大工左官がそちこちを、真昼間まっぴるま夜討ようちのように働く。……ちょうな、のこぎり鉄鎚かなづちにぎやかな音。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)