外面うわべ)” の例文
外面うわべだけは可なり鄭重ていちょうに、直也を引いた。直也は、その口を一文字にきしめたまゝ、黙々として一言も発しなかった。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
つまりは外面うわべはあまりないくせに、そこほうでよくるとった、よほど不思議ふしぎ似方にかたなのでございます。
しかも世人の多くはただその外面うわべのみの観察から、部落民は疑い深いものである、近づき難いものであるときめてしまって、他人ひとのことよりもまずわがことと
融和促進 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
鱗が重なり重なッて髪の外面うわべを包んで居ます丁度筍の皮の様な按排式あんばいしきに鱗は皆根からすえへ向て居るのです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
ああなると神通力じんずうりきを得ておいでなさるから、とても外面うわべだけを飾って出たところで仕方がありませんな
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
其のたがいに笑うのを師匠が見ると外面うわべへはあらわさないが、何か訳が有るかと思って心ではきます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
よし外面うわべだけの紳士にせよ、この世にはじつに少ないのではないか。
決闘 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
名主へ行って話をして、れは外面うわべ瓦落がら/\して、鼻先ばかり悪徒あくとうじみて居りますが、腹の中はそれほどたくみのある奴では無いと、う己が執成とりなして置いたからられる、云はゞ恩人だ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これへ縛り付けてくからは、身でも投げたか、但しは雑木山へでも入って首でもくゝって死んだかと思って、山川を捜したが判りませんので、おかめは心の中で嬉しいが、外面うわべでは五八に言付けて
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)