夏分なつぶん)” の例文
「いえ、戯談ぜうだんなぞ申しません。鶏小舎とりこやの古いのを買ひまして、それにすまつてゐるのです。夏分なつぶんになりますと、羽虫はむしに困らされます。」
歌は頗る悠長なもので、夏分なつぶんの水飴の様に、だらしがないが、句切りをとる為めにぼこぼんを入れるから、のべつの様でも拍子は取れる。
坊っちやん (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それは隨分ずいぶん不便利ふべんりにて不潔ふけつにて、東京とうけうよりかへりたる夏分なつぶんなどはまんのなりがたきこともあり、そんなところれはくゝられて、面白おもしろくもない仕事しごとはれて、ひたいひとにははれず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夏分なつぶん客が来ると、まだ挨拶もはさないうちに、主人の方で帯をほどいて真つ裸になる。
夏分なつぶんの旅は何よりも身軽で無くてはならぬ。で、三隅氏は旅鞄はそつくり手荷物として預け入れたが、そのうちたつた二つの小荷物だけは、自分の坐席へ持ち込んで、網棚の上へ置くのを忘れなかつた。