売婦ばいた)” の例文
紳士 口でな、う其の時から。毒蛇どくじゃめ。上頤うわあご下頤したあごこぶし引掛ひっかけ、透通すきとおる歯とべにさいた唇を、めりめりと引裂ひきさく、売婦ばいた。(足を挙げて、枯草かれくさ踏蹂ふみにじる。)
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あゝ、此処に居つたな、悪魔めが、不浄な売婦ばいためが、黄金きんと血とを吸ふ奴めが。」彼は聖水を屍と柩の上に注ぎかけて、其上に水刷毛みずはけで十字を切つた。
クラリモンド (新字旧仮名) / テオフィル・ゴーチェ(著)
さほどの鈍的とんちきでもなかったが、天罰よ。先生の目をくらまして、売婦ばいたなんぞ引摺込む罰が当って、魔がしたんだ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
勿体もったいない、一度先生が目を通して、綺麗にってあるのを、重箱のまま、売婦ばいたとせせりばしなんぞしやあがって、弁松にゃ叶わないとか、何とか、薄生意気な事を言ったろう。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
売婦ばいため、お玉杓子たまじゃくしめ、汚らわしい! と二三人、手と足を取って仰向けにひっくりかえしたので、泥水を飲んで真蒼まっさおになって帰ると、何条これを許すべき、突然いきなり細紐でぐるぐるまき
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)