地色じいろ)” の例文
その三は太く黒きわくを施したる大なる書院の窓ありてその障子しょうじは広く明け放され桜花は模様の如く薄墨うすずみ地色じいろの上に白く浮立ちたり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今それをアニリン染料せんりょうの紫にくらぶれば、地色じいろ派手はででないから、玄人くろうとが見ればっているが、素人しろうとの前では損をするわけだ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
和尚さま、あれさ仏が睨みます、なんて言わせる坊主も罪が深いわねえ。地色じいろはあぶないねえ。だからやっぱり楽しむには役者買いが一番でしょう。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まっ赤な地色じいろに、白い水玉もようのある、だぶだぶの道化服、その赤い道化師が、時計塔のとんがり屋根のてっぺんに立って、避雷針ひらいしんのながい棒につかまっているのです。
塔上の奇術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私は先年、秋田県の花輪はなわ町の物屋ものやたのんで、絹地きぬじにこの紫根染しこんぞめをしてもらったが、なかなかゆかしい地色じいろができ、これを娘の羽織はおりに仕立てた。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
木板画は春信以後その描かれたる人物は必ず背景を有しここに渾然こんぜんたる一面の絵画をなす、然らざれば地色じいろの淡彩によりてよく温柔なる美妙の感情をいざなへり。
浮世絵の鑑賞 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
木板画は春信以後その描かれたる人物は必ず背景を有しここに渾然こんぜんたる一面の絵画をなす、然らざれば地色じいろの淡彩によりてよく温柔なる美妙の感情をいざなへり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)