囘向ゑかう)” の例文
壽阿彌は高貴の家へも囘向ゑかうに往き、素封家そほうかへも往つた。刀自の識つてゐた範圍では、飯田町あたりに此人をしやうずる家がことに多かつた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
案内して下さいとふと、「へいかしこまりました」とつてはかへ案内して掃除さうぢしてくれましたから、はかの前にむかつてわたし縁類えんるゐでもなんでもないが、先祖代々せんぞだい/\囘向ゑかうをしながら、只見とみると
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
むゝ、侍童こわらはめがなにたとらせをる。いま/\しい、何者なにものであらう、今頃いまごろ此邊このあたり彷徨さまようて、おれ眞情まごゝろ囘向ゑかうをばさまたげをる。や、炬火たいまつってるわ!……よるよ、ちっとのおれつゝんでくれい。
う、ながらわたしは、兩手りやうてはせて囘向ゑかうをしました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
壽阿彌は伊澤氏に來ても、囘向ゑかうに來た時には雜談などはしなかつた。しかし講釋に來た時には、事果てゝ後にしばらく世間話をもした。刀自はそれに就いてかう云ふ。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)