囈語うはごと)” の例文
たゞ臨終に貴女あなたのお名前を囈語うはごとのやうに二度繰り返したのです。それで、万一貴女あなたに、お心当りがないかと思つて参上したのですが。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
娯しみを失ひきつた当麻の古婆は、もう飯を喰べても味は失つてしまつた。水を飲んでも、口をついて、独り語りが囈語うはごとのやうに出るばかりになつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
我床には呪水をそゝぎぬ。わが眠に就くときは、僧來りて祈祷を勸めたり。此處置は益〻我心をおだやかならざらしめき。囈語うはごとの由りて出づるところは、われ自ら知れり。
理由わけわからぬ囈語うはごとをいつて、意識いしきまつた不明ふめいつた。つひには異常いじやうちからくははつたかとおもふやうにおしなあし蒲團ふとんけつ身體からだ激動げきどうした。枕元まくらもと人々ひと/″\各自てんでくるしむおしなあしおさへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
永久に、消え去らうとする青年の意識が、ホンの瞬間、此世に呼び返されたのか、それとも死際の無意味な囈語うはごとであつたのだらうか、青年は
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
この「ルチフエエル」が姿をば、一たび見つるもの忘るゝことなし。われもダンテが詩にて、彼奴かやつ相識ちかづきになりたるが、汝はよべの囈語うはごとに、その魔王の状を、つばらに我に語りぬ。
その前後から、烈しい高熱に襲はれ初めた瑠璃子は、取りとめもない囈語うはごとを云ひつゞけた。その囈語の中にも、美奈子は、母が直也と呼ぶのを幾度となく聴いた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)