囈言たわごと)” の例文
「中国の文化にうとい遠国の使者だ。わが大国の気象も真の武威も知らんのでそんな囈言たわごとを申すとみえる。——楊修」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
是で見るとアノ咒語は決して狂人の作った囈言たわごとではない、確かな謎が籠って居るのだ、丸部家が先祖代々から其の当主にアノ咒語を暗誦させたも無理はない
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「憎き者ども、わが子のかたき、七しょうまでたたりくれん」など囈言たわごとを吐くより、五人は生きたる心地もなく再び南山にとって返し、狐の穴に叩頭百拝こうとうひゃくはいび言よろしくあり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
七歳の少女が七歳であるための余儀ない遊びならともかく、私はすでに老廃、その廃園にある青みどろの水の中に、まだ盛りあがる囈言たわごとに耳をかたむけていたのである。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
神と自己とを対立させるが故に、人間は堕落するのだ。神の要求はそのまま人間の要求でなければならぬのだ。お前はそれをすら知らないで、一体何んの囈言たわごとをいおうとするのだと。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
人を人と認めて申し出たわけではない、相変らず天井を仰いで、掌を頭の後ろに組んで、眼はじっくりと塞いだままで、こう言うのですから、正気か囈言たわごとかの境がいよいよ怪しいものになってくる。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
根も葉もない囈言たわごとにしかすぎぬ。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
「何を囈言たわごと! えい放さぬか!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これで毒がなかったらなどという望みは、逸民の慾だ、ちり鍋の春菊が赤くなった頃によく出る囈言たわごとである。
河豚 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
或いは狂人が囈言たわごとを記したに過ぎぬなどと笑われた彼の咒語は、其の実苦心惨憺の余に成った者で、之を作った当人は一字一字に心血を注いだに違いない、余は之まで聞いて
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「よくも、ぬけぬけと囈言たわごとを続けた。館を出ていずれに越そうとする。」
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
まだ囈言たわごとを吐いていやがる。おれの悪を偽面とぬかしたが、てめえも、ひじりめかしたその偽面を、ぬぎ捨てて、凡下ぼんげは凡下なりに世を送ったほうが、ずんと気が楽だろうぜ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「地摺り青眼? おぬしもそんな囈言たわごとをいうか。世に地摺り青眼などという構えはありはしない」
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おのれ云わしておけば好きな囈言たわごと、さあ、俺等の一族に指でも指した奴は、なぶり殺しにするのが雨龍一族のおきてだ。引ッからめて頭領かしらのところへ吊して行くから観念しろよ」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こやつ、なにをさかしげに、訴えるかと思えば、夢でも見てきたような囈言たわごと。この清盛に弓をひく者はおろか、西八条の邸に小石一つ投げつけ得るほどの者が、天下にあろうか」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「黙れ黙れッ、気儘きままに云わしておけば好き勝手な囈言たわごとおのれ如きに身の指図を受けようか」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
くるも意とせず、勝手気ままな囈言たわごとを投げあっているこれらの男共は、いったい何を生命に求め、何を職としているかという疑問になると、これは、小次郎がなお多くの年月を、実際に
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
董卓が、怒るのを、あたかも痴児の囈言たわごとのように、苦笑のうちに聞き流して
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こいつめが! いわしておけば存分な囈言たわごとを」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おのれ、まだ囈言たわごとをほざくかっ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)