嘘吐うそつ)” の例文
「それ見ろ、馬鹿七の嘘吐うそつき! 何も出やしないぢやないか。」といつて智慧蔵が大声で呶鳴りました時、向ふの大きなくすの木のかげから
馬鹿七 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
「だってこの前もその前も買ってやるっていったじゃないの。小父おじさんの方があの玉子を出す人よりよっぽど嘘吐うそつきじゃないか」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
男つて嘘吐うそつきよ。女を口の先でまるめて、自分の境界きやうがいはちやんとしておくのね。私を、こんなところへ連れて来て、思ひ知らせるなンてひどいわ。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
嘘吐うそつきで、お人好しで、人に瞞されやすく、自分の行為に、善悪の識別というものを持たない。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ルピック夫人(右手を振り上げ、くずれかかる)——お前の嘘吐うそつきなことは百も承知だ。しかし、これほどまでとは思ってなかった。嘘の上へまた嘘だ。どこまででも行くさ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
銀子はうなずいていたが、やっぱり自分も大胆な嘘吐うそつきなのかしらと、空恐ろしくもあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
エデンに嘘吐うそつきのじやと、だまされやすい女とが居るやうに、日本にもこの二つがざらに居るから、この意味で楽園エデンだといふのに異議は無いが、景色はさう/\自慢する程のものではない。
さうして私のことを口さがもなき身の程知らぬ嘘吐うそつきだと苦々しく思はれるに違ひありません。——さう思はれても全く仕方がありません。別に私は弁解しようなんて心は起しません。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「人間は生れつき嘘吐うそつきである」、とラ・ブリュイエールはいった。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
「貝、おれがそのような嘘吐うそつきに見えるか。」
嘘吐うそつきゃあがれ!」
仮装観桜会 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
嘘吐うそつきやがれ」
つまり戦争が正直な二人ふたり嘘吐うそつきにしたのだといわなければならない。
戦争からきた行き違い (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
嘘吐うそつき! こんな月夜の晩に夜釣りがあって堪るものか。」
吊籠と月光と (新字新仮名) / 牧野信一(著)
「ぢやあたいのお父ちやん嘘吐うそつきだ。私をだましたんだ。」
チビの魂 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
役人に嘘吐うそつきが多いやうに瓜哇ジヤワ人には魔法使が多い。
決して口に出して云はぬ稀大の嘘吐うそつきである。要心せよ。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)