吐血とけつ)” の例文
ただわたしの体を捨てる、吐血とけつの病に衰え果てた、骨と皮ばかりの体を捨てる、——それだけの覚悟をしさえすれば、わたしの本望は遂げられるのです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの色後家の亭主——小倉嘉門が、吐血とけつで死んだのは隣りの谷口金五郎に招ばれて、散々呑まされた晩ぢやなくて、それから三日も經つてからのことですよ。
その前から江戸に出て来て下谷したやに居た緒方先生が、急病で大層吐血とけつしたと云う急使きゅうつかいに、私は実にきもつぶした。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
この様子では飲料のみもの吐血とけつをしそうにも思われないから、一息にあおりました。実はげっそりと腹も空いて。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鼻や口にも吐血とけつしたかたまりが残っているし、五体は紫斑しはん点々で、劇毒の砒霜ひそうを一服られたナ……と、すぐ見当がつきましたから、こっちも途端に、腹を抑えて、ウウムと苦しんで見せたんですよ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
樹脂色の蝗の吐血とけつが掌についていました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
あかあかと日暮にちぼまち吐血とけつして
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
胃の病の吐血とけつのためといふことにされてしまひましたが、日頃そのやうな氣振けぶりもなかつたので、谷口金五郎樣のところに招ばれて、したゝかに呑んだ御酒に、何やら仕掛があつたのではあるまいかと
そこへわたしは去年の末から、吐血とけつの病にかかってしまいました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)