可惜あったら)” の例文
「艶じゃア無い、真個ほんとにサ。如才が無くッてお世辞がよくッて男振も好けれども、唯物喰ものぐいのわりいのが可惜あったらたまきずだッて、オホホホホ」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
其許そこもとらが生きているうちに成功しなんだら、可惜あったらほり埋草うめくさじゃ。仮に間に合っても、ずるいのは、お先棒には飛び出さんものだ。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
存命していても二葉亭はやはりとつおいつ千思万考しつつ出遅れて、可惜あったら多年一剣を磨した千載せんざいの好機を逸してしまうがおちであるかも解らん。
二葉亭追録 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
中にはことわざにも申します、一口茄子なすてやるは可惜あったらもの、勿体ないと、神棚へ上げて燈明みあかしの燈心をふやしまして、ほほう、茄子ほどな丁子ちょうじが立った
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「あなたは、おできになることが百もおありなのに、身うごきもできない。あなたがわたくしみたいに木のぼりがおできでしたら可惜あったら生命いのちをおとしなさることもなかったでござんしょう」
危いことするは余り可惜あったらものだ思う気が、ふいと起ってどうにも出来ねえのですのだで。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あつらえてこしらえたような、こういう方がまたあろうか、と可惜あったらもので。可惜もので。
誓之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
立替たてかえましょう、可惜あったらものを。七貫や八貫で手離すには当りゃせん。
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はて、可惜あったら二つないきもつぶした。ほう、町方まちかたの。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)