口誦くちず)” の例文
おもてを袖におおうて、あわれと泣きしずみながら、勝頼夫人が口誦くちずさむと、侍女のうちのひとりが、同じようにむせびながら
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと宮家は詩情を催され、お供もつれられずただお一人で、館の裏庭へおでましになり、咲き垂れている藤の花の上に、おぼろに出ている月を仰ぎながら、朗詠を口誦くちずさまれ彷徨さまよわれた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
堀秀政がいうと、秀吉は、さもあろうとうなずいた。そしてそれらの死屍ししのあいだを歩いて、すぐ山を降って行きながら、こう連歌れんがの上の句を口誦くちずさんだ。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一学様なら、よく往来を酔って通ったり、小唄を口誦くちずさんで、夜晩く帰って行ったり、おもしろい方じゃありませんか。だいじょうぶ、御心配はありません。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こんな歌も侍者の公卿に口誦くちずさまれたほど、この日の道では、囚人めしゅうどと武士との間も、なごやかだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵が口誦くちずさむのを、権之助はこうべを垂れて聞いたが、そのまま、使いの二品を懐中に
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木村岡右衛門は、頭巾の裡に縫いこめてある自作の詩を、白い息して口誦くちずさんでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、彼には珍らしい微吟びぎん口誦くちずさみなどしつつ、浮き浮きと見物して廻っていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したたかに投げつけられて、ひたいの血と泥とをこすって、無念な顔をしている弁円のすがたを見て、四郎はすぐそれを思い出した。——彼は、子供が覚えたてのいろはを口誦くちずさむようにあわてて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万恨ばんこんの辞世を口誦くちずさんで、白装束を自刃の鮮血に染めて伏した夕べは。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思わず口誦くちずさんだ人たちもあろう。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小謡こうたいなど口誦くちずさんでいた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
城太郎はすぐ口誦くちずさんで
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)