あき)” の例文
蓮華寺に詣り、午後磨針嶺すりばりれい望湖堂に小休す。数日木曾山道の幽邃にあきし故此にきたり湖面滔漫を遠望して胸中の鬱穢うつくわい一時消尽せり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
(ここで再び四五ニズムの表現を用ふれば。)つまり友情のマンネリズムにあきが来て、皆が恋愛に走り出したためである。
四五ニズム述懐 (新字旧仮名) / 原民喜(著)
国子はものにたえ忍ぶの気象とぼし、この分厘にいたくあきたるころとて、前後のおもんばかりなくやめにせばやとひたすら進む。
樋口一葉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
尤もその間にも、先刻も申上げました、兄の亡霊に丈けは絶えず悩まされていましたけれど——が、一年という月日は、物事にあきっぽい私には最大限でした。
けれども、大体に於て、舞台にはもうあきが来ていた。幕の途中でも、双眼鏡で、彼方あっちを見たり、此方こっちを見たりしていた。双眼鏡の向う所には芸者が沢山いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども、大体に於て、舞台にはもうあきてゐた。まく途中とちうでも、双眼鏡で、彼方あつちを見たり、此方こつちを見たりしてゐた。双眼鏡のむかふ所には芸者が沢山ゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)