厚顔あつか)” の例文
旧字:厚顏
からすの群れは、急に厚顔あつかましく地上へ降りて来て、死骸へたかり、梅酢うめずを浴びたようになって、驚喜の翼をっている。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はなは、この厚顔あつかましいくもが、せめて花弁はなびらだけ、いとでしばりつけないのを、せめてものしあわせとかんがえていました。
くもと草 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それですから男子の前で話が少しでも智力を要する問題に及ぶと厚顔あつかましく支離滅裂な冗弁を並べるか、謙遜して口をつぐんでしまうかの外ありません。
婦人改造と高等教育 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
稼ぎ高を山分けに致しますから……とか何とか厚顔あつかましい事を云って、柔らかく固く相談をしますと、不思議にも若親分が、青い顔をして暫く考えたのちに、黙って承知したんだそうです。
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それじゃあ厚顔あつかましいという意味ですか」
ひやめし物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
厚顔あつかましい女と、きっと、御立腹になるかも知れませぬが……もしっ、生涯、夫婦が御恩に着ますから……』
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ても、厚顔あつかましい。めずらしやとは、わしの方でいうことば。清水きよみず三年坂さんねんざかでは、まんまと、討ち洩らしたが、きょうこそ、その素首すこうべは、この婆がもろうたぞ」
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お見覚えもないはずでございまする。初めての御見ぎょけん。それなのに、こう厚顔あつかましゅう」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……ところが、四十だいとなると、女に対してすることが厚顔あつかましくもなるし、それがおつうの場合のような事件になると、今度は世間がゆるさない。そして、致命的な外聞になってしまった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)