厚遇こうぐう)” の例文
父は自分をすてたにもかかわらず、自分はむしろ織田の厚遇こうぐうを受けた、そのことすらも父の正義の当然の報酬の如く感じた、或いは感じたがろうとした。
家康 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
嗚呼ああ、先生なんぞ予をあいするの深くしてせつなるや。予何の果報かほうありて、かかる先生の厚遇こうぐうかたじけのうして老境ろうきょうなぐさめたりや。
また年頃の経験から素人しろうとにかかるお客はいかに厚遇こうぐうしても、三度以上来るものは少く、大抵二度にきまっている事をよく知っていたので、無心をいうなら
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
騒擾そうじょうの際に敵味方相対あいたいし、その敵の中に謀臣ぼうしんありて平和の説をとなえ、たとい弐心ふたごころいだかざるも味方に利するところあれば、その時にはこれを奇貨きかとしてひそかにその人を厚遇こうぐうすれども
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
仏教上の事については充分に説明し博士も大いによろこんで私共を厚遇こうぐうしてくれたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
本艦上には、シュペー号に撃沈された英国船九隻の船長その他の幹部乗組員が収容されているが、彼等とて、むしろ厚遇こうぐうされているようだ。今しも彼等が、甲板を散歩しているのが見える。
沈没男 (新字新仮名) / 海野十三(著)