ごう)” の例文
勇と秀子の猛烈な恋にごうを煮やして、老嬢オールドミスの岡焼半分に、その二品を取出して、勇の発見するような場所へそっと移したのでした。
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
しかしそこはごうを経た化鳥、地へ落ちて死骸を曝らそうとはしない。さも苦しそうに喘ぎ喘ぎ地上十間の低い宙を河原の方へ翔けて行く。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あざみも長い間の押し問答の、石にくぎ打つような不快にさっきからよほどごうが沸いてきてる。もどかしくて堪らず、酔った酒もめてしまってる。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
あなたの美しい姿を見て、あなたをしたって、まゆの糸のようにまとっていて、こんなことになったのです。これは情魔のごうです。人間の力ではないのです。
封三娘 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
飢鷹に髓をつつかすのだ、それで、肉が腐りただれてなくなると、神水をかけて業風ごうふうに吹かすと、また本の形になる、こんな奴は、億万ごうを経ても世には出られないよ
令狐生冥夢録 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その父仇を報ゆればその子はごうを行なう。これあにやむをえんや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
過ぎにしも過ぎせぬ過ぎしひと時に、ごうの「心」の
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
もっとも昔の人はこれを一つのごうと観じ、謡曲の作者は、紫式部をさえ罪人扱いにしているが、今の人は、作中の人物をなつかしんで、碑を建て塚を築いている。
佐介も乗り気にならぬという次第で父はごうが煮えて仕方がない、知らず知らず片意地になりかけている。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「弟はきっと、ひどくとうとい者になるだろう。これは狐が来て、雷霆らいていごうを避けていたのだ。」
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
かみなりごうがあります、あなたは死を覚悟でそれに当ってください、そうしてくださるなら、その殃をのがれることはできるのです、もしそうしていただくことができないなら
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「若い娘にごうを晒さして、死骸にあんな恥を掻かせるというのは、人間らしい心持のない奴だ」
私の母が雷霆らいていごうに遭って、あなたのお父様の御恩を受けましたし、また私とあなたは、五年の夙分しゅくぶんがありましたから、母が私をよこして、御恩返しをしたのです。もう私達の宿願は達しました。
小翠 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
「若い女の首へ縄をつけて、両国橋の欄干からブラ下げるのは、よくよくごうを晒さしたい野郎の仕業でしょう。この娘を口説き廻したのを片っ端から挙げさえすれば、わけはありません」
「芝居だよ、これは。悪者もこれくらいごうを経ると、いろいろな芸当をする」