到来物とうらいもの)” の例文
よほど余計な到来物とうらいものでもなければ出さないで、連中たちの負担でまかなわせましたばかりでなく、とき/″\はこんな負担を命じました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「冬じゅうの居食いで、山寨の倉も少々お寒くなっていたら、この到来物とうらいものときたぜ。なんとこんな疾風はやてなら、ときどきせて来てもらってもいいな」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「御生憎様、もう是限これぎりなの。到来物とうらいものよ」と云つて梅子は椽側へて、ひざうへちたウエーフアーのはたいた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そう。一杯もらいましょう。茶の間に到来物とうらいもの羊羹ようかんか何かあったと思うが、ついでにちょっと見て下さい。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
(包を出して)礼儀上到来物とうらいものですって言うんだって、中味は「藤屋」の……。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
酒粕さけかすに漬けた茄子なすが好きだというので、冬のうちから、到来物とうらいものの酒粕をめばりして、台所の片隅に貯えておき、茄子の出る夏を楽しみに待ち受ける、というような、こまかい神経のくばり方が
藤村の個性 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
せめて玉子でも新らしければ少しは持つけれども、二月ふたつきも前に外所よそから貰った到来物とうらいものの玉子だ。それも上海玉しゃんはいだま下等物かとうもので、わった時は大概卵黄きみが壊れていた。腐ったものは堅いものよりなお悪い。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
隠居は、ってきた小婢こおんなから包みを受け取ると、ゆっくりかかって一つ一つ取り出した。地方からの珍らしい到来物とうらいもので、自分の分を今まで取っておいて、二人を喜ばせようと持ってきたのだった。
万年青 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
到来物とうらいものでござんす。」
あの顔 (新字新仮名) / 林不忘(著)