初七日しょなのか)” の例文
彼は御親類たちに合わせる顔も無いと云って、久兵衛が葬式の日にも、初七日しょなのかの墓参の日にも、自分から遠慮して参列しなかった。
半七捕物帳:49 大阪屋花鳥 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
初七日しょなのか法会ほうえがすんだ夜である。ひさびさに子供たちと食事をした藤右衛門は、まえから考えていたのであろう、格之助を呼んで、今宵から屋敷うちで看経はならぬと云った。
日本婦道記:松の花 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
なげき悲しんで呉れたのだが、やがて初七日しょなのかも済んだとき、彼女の方から解職を申出もうしいでたので、相川操一氏は、丁度珠子の学校友達の、あるお嬢さんの家から話があったのを幸い、殿村未亡人を
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それからもう何年かたった、ある寒さの厳しい夜、僕は従兄の家の茶のに近頃始めた薄荷はっかパイプをくわえ、従姉と差し向いに話していた。初七日しょなのかを越した家の中は気味の悪いほどもの静かだった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ああわれらモータル! あるいは今年の夏には他の二つの不祥に遭遇そうぐうせねばならぬかもしれません。私は葬式後初七日しょなのかの喪のあけぬまの、funèbre な空気のなかでこの手紙を書きました。
青春の息の痕 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
ついきのうは初七日しょなのかで、宮中をはじめ二条の故館こかんでは法要が行われ、各寺院でも終日の勤行ごんぎょうがあり、町の声にしても、もうい人となると、いまは何か、巨大に感じられる人間像とあとの空虚うつろ
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
師匠が死んで稽古は無いはずであるのに、家内は何かごたごたしていた。半七は指を折って、あしたは初七日しょなのか、今夜はその逮夜たいやであることを知った。
彼女はお里の母の初七日しょなのかでも済んだ頃にもう一度その家へたずねて行って、おだやかに別れ話をきめようと思った。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
新兵衛の初七日しょなのかが済んだ明くる晩に、案のじょうその長平が短刀を呑んで押し込んで来て、どうする積りかお浪を嚇かしているところを、すぐに踏み込んで召捕りました。
半七捕物帳:19 お照の父 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
世間に対して面目ないせいもあろう、主人の次郎兵衛は奥に閉じ籠ったきりで、ほとんど誰にも顔をあわせなかったが、初七日しょなのかのすむのを待って再び寺へ帰るとの噂であった。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
表へ出てみると、関口屋は女房の初七日しょなのかも過ぎたのであるが、コロリ患者を続いて出したので、近所へ遠慮の意味もあるのか、大戸を半分おろして商売を休んでいるらしかった。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
初七日しょなのかを過ぎてまだ間もねえことだし、親類の人達だって誰が参詣に来ねえとも限らねえから、あまりこう散らかして置いてもよくねえと思って、毎朝わしが綺麗に直して置くと
半七捕物帳:24 小女郎狐 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「就きましては、明日は初七日しょなのか逮夜たいやに相当いたしますので、心ばかりの仏事を営みたいと存じます。御迷惑でもございましょうが、御夫婦と御子息に御列席を願いたいのでございますが……」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)