刀刃とうじん)” の例文
身に徳があれば刀刃とうじんも段々に折れることでございましょう、徳がなければ刃を待たずしても亡ぶるものでございます。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼は、琵琶師びわしが琵琶を弾ずるときのように、長剣を、きっさきを上に、膝のうえに斜めにかまえて、声を合わせて、左手のつめ刀刃とうじんをはじくのである。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
豊かに結ばれた唇には、刀刃とうじんの堅きを段々にやぶり、風濤洪水ふうとうこうずいの暴力を和やかにしずむる無限の力強さがある。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
巌の憤怒ふんぬは絶頂に達した、およそ学生の喧嘩は双方木剣をもって戦うことを第一とし、格闘を第二とする、刀刃とうじんや銃器をもってすることは下劣げれつであり醜悪しゅうあくであり
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
衣をいで之をばくし、とうを挙げて之をるに、刀刃とうじん入るあたわざりければ、むを得ずしてまた獄に下し、械枷かいかたいこうむらせ、鉄鈕てっちゅうもて足をつなぎ置きけるに、にわかにして皆おのずから解脱げだつ
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかし、ひとたび人間が、信念に身をかためてむかう時は、刀刃とうじんも折れ、どんな悪鬼あっき羅刹らせつも、かならず退しりぞけうるという教えもある。ふたりがふりかぶった太刀は、まさに信念の一刀だ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また苟且かりそめの病に命を取られるようなもろい鍛錬のお方でもない、いわんや刀刃とうじんの難によって命をおとすことのあり得べきお方ではない、もし先生が死なれたとすれば、病難、剣難のほかの
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)