出頭しゅっとう)” の例文
贔屓ひいきにせられるようでござるが、手前家来の仕置は、不肖ながら手前一存で取計らい申す。如何に当時出頭しゅっとうの若年寄でも、いらぬ世話はお置きなされい。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かかる軍紀のゆるみが見ゆればこそ、皇帝も特にこの高俅へ重任を命ぜられたものではある。しかるに、出頭しゅっとう簿へ名をのぼせながら、今日の馬揃うまぞろえに、姿を
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この方便門ほうべんもんを通じて出頭しゅっとうし来る行為、動作、言説の是非は解脱の関するところではない。したがって吾人は解脱を修得する前に正鵠せいこくにあたれる趣味を養成せねばならぬ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
揃へまた立作者たてさくしゃ出頭しゅっとうの折はその羽織をたたみ食事の給仕をなし始終つき添ひ働くなり。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ことに羽柴家の支配人近藤こんどう老人は、主家の一大事とばかりに、さわぎたてて、警察へ出頭しゅっとうして、保護をねがうやら、あたらしく、猛犬を買いいれるやら、あらゆる手段をめぐらして
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
母親ははおやは、おそるおそる職員室しょくいんしつ出頭しゅっとうして、ひくくあたまをたれて、いかめしい、ひげのあるかおを、まともにようとせず、ただ教師きょうしのいうことを、ひたいあせをにじませながらいていました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
がつにアンドレイ、エヒミチは市役所しやくしょから、すこ相談そうだんがあるにって、出頭しゅっとうねがうと招状しょうじょうがあった、で、定刻ていこく市役所しやくしょってると、もう地方軍令部長ちほうぐんれいぶちょうはじめ、郡立学校視学官ぐんりつがっこうしがくかん市役所員しやくしょいん
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)