すさまし)” の例文
たちまち起上りし直行は彼の衿上えりがみ掻掴かいつかみて、力まかせに外方とのかた突遣つきやり、手早く雨戸を引かんとせしに、きしみて動かざるひまに又駈戻かけもどりて、狂女はそのすさましき顔を戸口にあらはせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
宮は見るより驚くいとまもあらず、諸共もろともに砂にまびれて掻抱かきいだけば、閉ぢたるまなこより乱落はふりおつる涙に浸れる灰色のほほを、月の光は悲しげに彷徨さまよひて、迫れる息はすさましく波打つ胸の響を伝ふ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この梅などはまる為方しかたが無い! こんな若い野梅のうめまきのやうなもので、庭に植ゑられる花ぢやない。これで熱海の梅林もすさましい。是非内のをお目に懸けたいでありますね、一日遊びに来て下さい。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)